ホテル阿寒湖荘 北海道釧路市阿寒湖温泉1丁目5番10号 TEL:0154-67-2231 FAX:0154-67-2593

人物往来

ホテル阿寒湖荘は、昭和29年、大変名誉なことに昭和天皇、皇后様と共にご宿泊されたお宿です。
その後も多くのご皇族のみなさまにお泊まりいただき、さらには「君の名は」の劇作家、菊田一夫氏、言語学者で国語辞典の編者として知られた金田一京助氏。そして日本を代表する俳優、森繁久弥氏などもご宿泊いただきました。
こうした著名人の方々が当館に残した書籍は、このうえない財産と申せましょう。

昭和天皇、香淳皇后ご来訪の足跡

昭和天皇、香淳皇后ご来訪の足跡PH

昭和29年8月14日・15日の両日、ここホテル阿寒湖荘に昭和天皇がご宿泊されました。お居間に入られた陛下は皇后様をそっといたわられ、地元民歓迎の湖の提灯行列や花火をお楽しみになられました。特に生物学者でもある陛下がご満足されたのが、翌15日の阿寒湖周遊であったといわれます。マリモにいたく感激され、大変なおよろこびようだったそうです。

こうした陛下のご来館当時の記録をロビーに展示。皇太子当時の今上天皇のお姿など、お写真とコメントを額に入れ、当時の記念としてご様子を紹介させていただいております。

菊田 一夫1908~1973(昭和4年~昭和48年)

菊田 一夫PH

劇作家。苦学の後、喜劇やラジオドラマの執筆にあたられます。後に演出も手がけられました。

「君の名は」「鐘の鳴る丘」などは、第二次大戦後の混乱した世相に訴えた代表作として今日まで語り継がれる名作です。また、放送文化賞も受賞されています。

金田一 京助
1882~1971
(明治15年~昭和46年)

金田一 京助PH

言語学者。東大言語科卒。

アイヌ研究で功績があり、昭和7年「アイヌ叙事詩ユーカラの研究」で学士院恩寵賞受賞、学士院会員、文化勲章受章。著書には「アイヌ聖典」「アイヌ文学」等があります。

森繁 久弥 「阿寒湖荘讃」

森繁 久弥「阿寒湖荘讃」PH

釧路から来て、十勝から来て、網走から来て、その県境を登りつめれば深い藍をたたえて、鏡のような神秘が光る。
野バラの奥のトラピストに、クリスマスの鐘が鳴る頃白髪のアイヌの老爺は、その秋辺に白い天馬が風に舞って北から南へ空を渡る夢を見るのだ。
その朝、阿寒湖は、一面の白氷と化して藍色をかくしてしまう。ヒメマスも、ミンクも、熊も、眠りへの支度をする。
エゾ松は雪の衣を重くして、イオマンテのかがり火がアイヌの口琴にゆれて、奇しき影は雪原をのたうつのだ。
アイヌ酋長の娘セトナの魂は雌阿寒に吹き上げたが、しもべマニベの魂は、氷の中で青いマリモと化したるか、長い冬の始まり悲恋の夜ばなしは尽きない。
シャモの鉾先を恐れて可憐な瞳をしばたかせた、シカやリスや野ウサギたちがようやくフプシヌプリのカラ松の間を我が庭と駆け回るのだ。雪割草が眼をさましては春は近いと告げる或る朝、解氷のひびきは山びこを呼んで澄み切った神秘の藍は、再び現はる。
ヒメマスどもは岸近きスズランの音を聴いて、銀鱗をうねらせ愛をささやく。
雌阿寒の噴煙は、再びすさまじくトド松の上をはい、やがて、山あいに紫のツツジ・シャクナゲを乱れ咲かす。
哀しきイヨマンテ、熊のむくろの上にも黒百合が、一つ咲き二つ咲いた、春はいち早く夏を呼ぶのだ。
そんな美しい山や湖、獣や魚やくさむらと、物語りの中に白亜六層の阿寒湖荘がなった。
人々はここに来て都塵を洗い、ふと、生きとし生ける、生きものの喜びを吸ふことが、あらねばならない。

一九六五年五月吉日
森繁 久弥